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うどん作り、新たな一歩

 4月30日(土) 晴れ

 午前7時、新上五島町の船崎饂飩伝承館に着くと、冷たい海風に包まれ、頬がピリッと引き締まった。うどん作りを一人でやり遂げられるんだろうかという不安と、自分の力でやってみたいというワクワク感がごちゃまぜになった気持ちを抱えながら、手ぬぐいを頭に巻き、帽子を深くかぶる。うどん作りのすべての工程を初めて一人でやりきる日。もちろん師匠の西崎さんが横についてくださるけど、自分で責任を持って、五島うどんを作る。うどん職人への、確かな一歩。

 使った粉は6kg。大きな桶に3kgずつ粉をふるい、塩水と混ぜる。捏ね機に入れ、取り出して手でこね、足で踏んでいく。一時間ほど寝かし、踏んで伸ばして、鎌で生地に大きな円を描きながら切り分ける。それを手で伸ばしながら桶に渦巻き状に並べていく。

 今まで見てきた師匠たちの姿を必死に脳裏に浮かべながら、手を足を動かしていく。簡単に見えていた作業が、実はかなり重労働だったり、後々の作業のために計算されたものだったり、実際にやってみることで初めてわかることが本当にたくさんあった。

 太いうどんを糸車みたいな器械を通して細くしてまた渦巻き状に巻き、油を塗っていく。師匠は手際よくくるくる渦巻きにするのに、私は何度も何度も器械を止めながら必死で渦巻きを作っていく。太さも全然均一にならなくて、器械にもうまく通らない。そして一番の見せ所であるうどんを「8の字」にかける掛けば作業。師匠の倍くらい、1時間ほどかけてなんとか掛けおえるけど、うまくかからないし、綺麗にかけられないし、太さもバラバラ。

 そんなチグハグが、最後のハタかけ作業の時に全部露呈して、かけてもうどんが伸びてくれないし、ぶちぶちと切れてしまう。かけてるそばから切れて床にパラパラと落ちて、伸ばす時間よりも落ちたうどんを拾って伸ばしてまたかける時間の方が圧倒的に長くて、情けなくて、こんなんでうどん作りやっていけるんだろうか、どこがいけなかったんだろうか、うまくなっていくんだろうかと、うどんを伸ばすほどにネガティブな気持ちが大きくなって、朝あったワクワク感とかどっかにいってた。

 それでも、やらないとうまくならないし、うまくいかなかった原因はいろいろ考えられるし、きっとそれが伸びしろなんだと信じて、かろうじて伸びてくれたうどんを見ながら思ったのでした。初日は本当に散々だったけど、だからこそ、一つ一つの作業を大切にしないといけないと心底思うことができたし、本当に貴重な経験になった。今しかできない失敗。次は胸を張ってうどん作りしたと言えるように、丁寧な仕事をしたいと思った。

 切れてしまい、落ちて曲がったうどん。これが人生で一番下手くそなうどんにする。

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