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夢をカタチにする下見③福岡県北九州市

 27日の日曜日、小国町での研修が終わり、いざ上五島へと戻りたいところなのですが、この日の最終の船は無くなってしまっていたので(たまたま博多発の夜行フェリー「太古」がドッグ入り…)、さてどこで泊まろうかと必死に考えて、「この先宿をやるなら、行ってみたい宿に泊まろう!」と思い、本やネットでリサーチして、移動時間や運賃とにらめっこして選んだのが、福岡県は北九州市小倉にあるHostel and Dining “Tanga table(タンガテーブル)”。カフェ&バーを兼ねるレストランの付いたゲストハウスです。

(レストランの部分。夜には宿の利用に関係なくたくさんの人で賑わっていました)

 この宿に決めた一番の理由は、宿の名前にもなっている旦過(たんが)市場に隣接しており、宿のレストランではこの旦過市場で仕入れた食材を使ったメニューを提供しているというちょっと変わったコンセプトに惹かれたから。旦過市場は、北九州の台所とも呼ばれていて、九州地方はもちろん、全国各地から様々な食材やお店が集まってくるそうです。

 市場って、それこそ売り子や地元の買い物客、観光客などいろんな人が集まってきて活気にあふれているので、旅をしたら訪れたくなる場所の一つ。そんな市場のすぐ近くにあることを宿のウリにしてるのってすごく面白いと思いました。

 もう一つ気になったのは、ビルの一室をリノベーションした新しい宿であるということ。北九州では空き家や空きビルのリノベーションが進められています。ビルをリノベーションして宿らしくするにはどうしてるんだろうって気になったし、何を隠そうこの宿の口コミの評価が高かった。人気の秘訣を探るべく、大分県のJR日田駅から各駅停車に揺られながら約2時間かけて小倉駅へと向かったのでした。(この時、日田駅の切符売り場で釣り銭8,000円を取り忘れたまま待合室にいて、気づいた少年が駅員さんに届け出てくれて難を逃れました。日田駅は新しくて駅舎が木造で、待合室は図書館みたいに本が並んでいて明るくて、高校生たちがワイワイ言いながら勉強してて、そこに少年の優しさもプラスされて、温かい思い出の場所になりました)

 小倉駅に無事に着き、賑やかな商店街を抜けて歩き続けること約8分、ひっそりとした市場に寄り添うように立つ1階がブックオフのテナントビルの4階に「タンガテーブル」はありました。

 カラフルな受付にちょこんと座っていた男性が、笑顔で出迎えてくれて、とても丁寧に宿の使い方を教えてくれました。この男性はみんなから「番頭さん」と呼ばれていて、各地のゲストハウスにとても精通していて、この番頭さんのおかげで小倉の夜がとても不思議な時間になったのでした。

(ゲストハウス部分の写真を撮るのを忘れてしまった!レストランの内装がお洒落)

 とにかく、私は女性専用ドミトリーに泊まったのですが、まずはベッドとベッドの空間が広い!なので荷物を開閉するスペースがちゃんとあって、この日は泊まっている人も少ないからか不便さは全くなかった。もちろんスーツケースのチャックやカーテンを閉める音には多少気を使うけど、荷物の置き場所に困ることがなくてよかった。ゲストハウスではゆったりしたスペースはとても大切だと思った。トイレもシャワー室も女性専用で、水周りも綺麗にしてあって、さらにはベッドもふかふかで、かなり快適に過ごせました。

 せっかく小倉に、しかも旦過市場の近くに来たんだから、近くをウロウロしようと思って、受付の番頭さんに「夜のオススメの散歩道を教えてください」って言ったら、「近くを流れる紫川でクリスマスのイルミネーションがあるので、ぜひ行ってみてください。そういえば、今日宿泊されている方が音楽をやっている人で、そこで路上ライブをやるって言ってましたよ。あ!ちょうど来たみたい」。番頭さんの目線の先にいたのが、ギターを背中に担いで丸メガネをかけた茶色いボブのヒトミちゃんでした。

 ヒトミちゃんは「今から路上ライブやるよー」って言ってて、でもちょっと寒さが不安だなって話しになって、そういえば私マフラーがあったなと思って、「マフラーいりますか?」って言ったら、「やったーお願いします」って貸してあげることになって、今から路上ライブをしに行く人ってかつて見たことないなと思って、せっかくだから付いていきますって言って、初めて出会った女の子と二人で夜の小倉に繰り出したのでした。

 歩く道すがら分かったのは、ヒトミちゃんは実は音楽を本格的にやり始めたのがつい一ヶ月半前で、実は今日が初めての路上ライブだってこと。「ギター持って宿に来たら、番頭さんに路上ライブやるんですかって聞かれたから、それいいなと思って『そうなんですよ~。いい場所あります?』って答えてたんだよね」って笑い飛ばすヒトミちゃん。なんでも、人前で初めて歌った時は、歌う直前まで歌わなくてもよくなるような言い訳をいっぱい考えてて、でもそんな自分が嫌で、よしやるぞって腹くくって、内臓が全部飛び出しそうなくらい緊張したけど、歌いだすとすごく楽しくなって、だから今はほとんど緊張しなくなったというヒトミちゃん。言い訳考えるとことかすごい分かるなって思いながら話を聞いてて、人が初めて路上ライブする瞬間を見届けられるなんて素敵だなと思いながら、冷たい風が吹き抜ける小倉の紫川沿いを歩いたのでした。

 番頭さんが教えてくれたイルミネーションはなぜか点灯してなくて、二人でひとしきり笑って、とりあえず人通りのある商店街に向かって、ぐるぐる歩き回って、人通りが多すぎない通りにあった腰がおろせる閉店した餅屋さんの前で、ヒトミちゃんはギターを引っ張り出して、お金を入れてもらえるように百円玉を何枚か入れたかばんを広げて、何の躊躇もなくギター片手に歌い出した。さっきのマシンガンみたいなトークの時とは全然違って、すごく柔らかくて優しい歌声で、カバー曲や、自分で作ったというオリジナル曲を優しい声で歌い続けた。賑やかな酔っ払いの人たちの声や、足早に通り過ぎる人たちの足音に時々かき消されながら、歌い続けた。

 「この歌をサナエちゃんに贈るね」って、短いオリジナルの歌を聴かせてくれた。その歌は、やりたいことやろうよ、食べたいものを食べようよっていうすごくまっすぐな歌で、きっとヒトミちゃんの中から生まれた大切な言葉で、歌っていいなって思った。

 30分くらい唄ってると、そばで立ち止まって聴いてた男性が、歌の途中でお金を入れて静かに立ち去っていった。歌い続けていたヒトミちゃんはびっくりして頭を下げて、ちょっと照れくさそうにしてて、歌い終わってから「お金もらちゃったよ」「すごいやん!」って二人ではしゃいだ。そのあとも、4人組の男女が来て、「この女の子が明日誕生日だからなんか歌ってあげてよ」って言ってきて、X JAPANとかリクエストされてたけどヒトミちゃんは得意の千と千尋の神隠しの「いつも何度でも」を精一杯唄っていた。最後はみんなで合唱になって、最後は一緒に記念撮影もしてた。酔っ払って絡んできた若い男の子たちにも、ヒトミちゃんはマイペースにギターを鳴らした。すっかり夜が更けて、体が芯から冷えてきて、そろそろ帰ろうってなって、ヒトミちゃんの奢りでローソンで温かい飲み物を買って、宿に帰った。番頭さんは私たちの話を目を丸くしながら聞いていて、交流スペースで作業をしていた写真を撮ってバイクで日本中を巡っている少年トモくんも巻き込んで、友達の家に来たみたいにダラダラ話し込んで、FBで繋がったら番頭さんと共通の友達がいたりして、本当に不思議な夜を過ごしたのでした。

 翌朝は、ヒトミちゃんと一緒に朝の賑やかな旦過市場や小倉城、リノベーションされた街並みなんかを一緒に巡って、またねってハグして私はバスを乗り継いで佐世保まで戻って、フェリーに揺られて上五島に帰ってきました。

(旦過市場。すごく雑多でいろんなお店があって面白くて、でもあと数年後には建て替えられるらしい)

 4日間、いろんな場所に行って、いろんな人に出会って、いろんな話をして、そして最後に自分に立ち戻ってみると、自分の夢や目指すカタチ、今やらないといけないことがより鮮明になっていました。明日からまた、フルスロットルで駆け抜けます。


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