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熟練の技

 “ACミランの10番を着けるチャンスが目の前にあって、違う番号を選びますか?僕は目の前にそのチャンスがあって、喜んで10番を要求しました。”

 サッカーセリエAの名門ACミランで活躍する本田圭佑選手が、ミランに移籍する際に背番号10を選んだことについて語った有名な言葉です。

 五島うどん作りの修行を始めて約1ヶ月が経ちました。2日ほど前、手作りで五島うどんを作る船崎地区で最もベテランで、かつ地区で一番うどんを売っている網田満智子さんから、なんと「うちのうどん作りを手伝ってほしい」と声をかけていただきました。

 網田さんは、もともと娘さんと二人でうどんを作っていたのですが、娘さんが入院してしまったため、作業がはかどらず人手が必要とのことでした。もちろん、私の働きぶりがいいからスカウトしてくださったわけではなく、文字どおり猫の手も借りたい状況の中でのことだったのですが、まだ「五島うどん」のうの字も知らないような私は、手伝うことでむしろ迷惑にならないだろうかとか、うどんをダメにしてしまったらどうしようとか、一瞬脳裏に不安要素がいくつも浮かんだけど、次の瞬間には「ぜひお願いします!」と言っていました。

 熟練の技を目の当たりにできる千載一遇のチャンスであると同時に、地域おこし協力隊として地域に入り、盛り上げるという使命を果たす小さいけれども新たなチャンスだと思いました。

 大ベテランの網田さんのそばで作業を手伝わせていただいて分かったのは、網田さんはうどんの前でどこまでも謙虚だということでした。一人じゃ二人分は絶対にできないから無理はしない。うどんの熟成具合を見て、すぐに温度と湿度を調節する。40年以上、ほぼ毎日うどん作りをしているのに、です。そして驚いたのは、足手まといのはずの私に多くの作業を任せてくださり、「あんたにもかけさすっけん」とか「ちょっと太かけど、よく出来とるよ」と背中を押してくださる網田さんの寛大さでした。もちろんうどんには妥協をしないし、自分が作ったうどんにものすごく誇りを持っておられていて、かっこいいなと思うと同時に、ものすごく優しい。一緒に作業をさせていただいた3時間半ほどの間に、網田さんの大ファンになってしまったのでした。

 平岩さんにしても西崎さんにしても網田さんにしても、誇りを持って物作りをしている人は本当にかっこいい。うどんの作り方や技術だけじゃなくて、そういう人間的な面でも師匠たちに少しでも近づけるように、うどん作りを頑張りたいと心から今日は思ったのでした。

 網田さんに教えていただきながら掛けたうどん。「ちょっと太かけど、後の方はよか!」と言っていただきました。明日はもっと謙虚に丁寧に。うどん修行は、人生の修行みたいや。

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