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五島うどん弟子入り日記

 地域おこし協力隊として、また任期後のこれからの人生に向けて、自分はどんなことがしたいのか、自分には何ができるのか、そんなことをずっと考えて考えて、たくさんの人に出会って、悩んで出した答えが、新上五島町の船崎地区で受け継がれている完全手作りの五島うどんの技術を受け継ぎ、自分の持ってるすべてを使い、五島うどんを通じて上五島の魅力を伝えること、でした。昔ながらの製法で五島うどんを作りながら、野菜を育てて、いつかはそんな自分たちの暮らしを体験できるような民泊ができたらいいなというのが、今の夢です。できるかどうか全然自信ないし、そんなんで食べていけるのか不安だらけですが、ワクワクしています。

 今日は、そんな夢に向かって一歩を踏み出すべく、船崎地区で約20年間、夫婦で力を合わせて手作りで五島うどんを作られている「平岩うどん」へ弟子入りさせて頂く初日でありました。午前3時に伺うために(うどん作りの朝はものすごく早いのです)、前日も早く布団に入って目覚ましをセットして気合いを入れて準備をしたのですが…

 目が覚めたら6時でした(−_−;)

 死んだと思いました。叫び声を上げ、噴出す変な汗をぬぐいながら、新聞記者時代に警察官を朝駆けしないといけないのに起きれなかった日のことをありありと思い出し、言い訳の言葉を振り払いながらすぐに準備して猛ダッシュで船崎地区へと向かいました。頼み込んで修行をさせてもらえることになったのに、いきなり迷惑をかけることになってしまった。怒鳴られるかもしれない、作業場に入れてもらえないかもしれない、そんなことも十分覚悟の上でした。作業場の前に立つと、中からトントントンという音が聞こえてきます。もちろん作業は始まっていました。自己嫌悪の渦を振り払い、深呼吸を3回して、作業場のドアを開けながら意を決して「竹内です!寝坊して申し訳ありません」と声をかけると、「はよ上がってこんね」「そこのスリッパ履いて、手をしっかり洗っておいで」と温かい声が降ってきました。もう涙が出てきて、鞄を放り出して帽子をかぶって、急いで作業場へと上がりました。

 すでに最初の工程はほとんど終わっていて、すでに「かけば」と呼ばれる2本の棒に麺を8の字にかけていく作業に入っていました。師匠夫婦はものすごいスピードで繊細な麺を均一の太さに伸ばしなら、撚りを入れて8の字にかけていきます。夫婦でもかけ方のスタイルが違って、淡々と動く力強い腕裁きをとにかくかっこいいなと思いながら見つめていました。

 ある程度かけ終わった頃、奥さんから「一回やってみんね」と作業を任せて頂きました。恐る恐る、見よう見まねでかけていきます。麺は持つと柔らかいけど引くと硬くて、戸惑いながらも無我夢中で、にかく集中しました。全然早くも上手くもないけど「なかなかいいよ!」と奥さん。師匠も「どれが竹内さんがかけたのか分からないよ」って。作業場は笑い声に包まれていて、なんでこんな私に優しくしてくださるんだろうと、本当に胸がいっぱいでした。

 その後も、見よう見まねで麺を伸ばしたり、乾燥させるために「ハタ」と呼ばれる干し具にかける作業を手伝ったりと、あっという間に時間が過ぎていきました。もう、本当に散々なスタートになりましたが、気持ちを切り替えて、名誉挽回するしかありません。

 温度と湿度で製法が変わるうどん作り。晴れの日にしかなかなか作業ができないようです。次の晴れの日は金曜日。今度は絶対に早起きして、うどん作りのすべての工程をこの目で見て、体に焼き付けたいと思います。

 畑日記に続き、これからはうどん弟子入り日記も更新していきます。いつか五島うどん職人になる日まで、温かく見守ってくださると幸いです。

初めて「かけば作業」から乾燥までを一人で手がけたうどん。乾麺の前の貴重な「半生麺」です。う〜ん…細い!?

弟子入り初日のうどん。もちろん地獄炊きにしていただきました。めちゃくちゃ美味しくて、ああ、五島うどん作りを極めてみたいと思ったのでありました。

もしかしたら、上五島に来なかったら一生出会ってなかったかもしれない五島うどん。人生って不思議です。

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