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絶品!ハタ鍋

 上五島に来なければ、こんな美味しい鍋には出会わなかったと思う。昨日アキラ君(夫・40歳)が鯛ノ浦で釣ってきたハタの鍋。今までに出合ったことのない旨味が口いっぱいに広がって、とても幸せな夕食だった。

 仕事を辞め、移住を考えたときに2人で実現しようと意気込んでいたことの一つが、自給自足の生活。経済面から移住に踏み切れなかったとき、自称釣りが得意なアキラ君が「その日食べる分の魚は俺が釣るから飢えさせない」と言ってくれ、私は最終的に移住を決断したのだった。アキラ君は海で魚を釣り、私は畑で野菜を育てる。新上五島町で地域おこし協力隊の仕事をしながら3年間で生きる術を確立することが、私たちボンビー夫婦の大きな目標となった。

 これまでアキラ君は何匹か珍しい魚を釣っていたのだが、ウロコを取るのは大変だし、シンクは生臭くなるし、とっても美味しいけどかといって2人で食べるとお腹いっぱいになるほどの量はないし…。私はこの一ヶ月で、釣りで食糧を確保していくのは難しいんじゃないかと半ば悟りつつあったのだが、今晩食べたハタが、私たちの食卓に革命をもたらした。

 私たち夫婦は、毎日代わりばんこで夕食を作っている。昨日は私がハヤシライスを作ったので、今夜は昨日ハタを釣ったアキラ君の番だった。アキラ君は、通りがかりの地元のおばちゃんから「ハタは鍋が美味しいよ」と言われたからと、昨日から鍋一択で夕飯の準備を始めていた。

 体長40センチの大きなハタを調理するのは本当に大変そうで、何度も包丁にハタの太い骨ががぶつかる音が響いていた。やっぱり魚は下ろしてあるのを買った方がコスパ的にもいいんじゃないと心の中でボヤいていたが、「できたでー」と言ってアキラ君が持ってきた鍋からは、なんとも言えないほど美味しそうなにおいが漂っていた。どれどれと思いながら、箸で持つとほどけるような柔らかい身を口に運ぶと、今まで味わったことのないような魚の旨味がふわっと広がった。噛むたびに旨味が押し寄せ、こんなに美味しい魚があったんだ、私の食の歴史が動いた!、とたまらず大きな声をあげてしまうほどにとてつもなく美味しかった。最後の〆の雑炊まで、本当に本当に美味しかった。

 完全な自給自足というのは難しいかもしれない。ただ、自給自足を目指す中で、驚くほど豊かな食事ができるんだとハタとアキラ君に教えてもらった。上五島で、アキラ君と一緒になんとかして生きていこうと腹をくくったから経験できる素晴らしい瞬間が多すぎて、あの時、えいやと決断して、本当によかったと思った食卓だった。次は私の番。いつか、今まで食べたことのないような野菜を作ってやる。

 写真は、アキラ君が釣ったハタ(上)です。

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